サプリメントが栄養学と予防医学を進化させ、医療を救う
医療でよく使われる言葉に「バランスのよい食事」と「適度な運動」というのがあります。
よく耳にする言葉だと思いますが、この言葉が示す内容が具体的におわかりになるでしょうか。
改めて問われると、あいまいで無責任な言葉であることに気がつかれると思います。
医者は、栄養学、運動生理学、健康学を学んでいません。
医者は、病気の専門家であって健康の専門家ではないのです。
それでは、医療というものは、なにを目指して病気と闘っているのでしょうか。
20世紀までの医療は、まさに「死の回避」という言葉で集約できました。
「救命」「延命」という「死なない」医療をテーマに突き進んできたといえます。
そしてそれには、莫大な費用がかかりましたが、その診断および治療の技術は、いきつくところまで進化したといってよいでしょう。
その努力と献身には、一国民として頭が下がる思いです。
しかし、気がついてみると日本はいま、治癒することのない慢性疾患に覆い尽くされようとしています。
「治す」「救う」が合言葉だった医療では、歯が立たない相手が蔓延しはじめているのです。
これまでの医療の考え方では「治せない」そして「救えない」病気、これまでの治療法がことごとく適用しない、捉えどころのない相手、それが「治らない」と定義された慢性疾患なのです。
いまや、延命は患者さんの苦しみをただ長びかせるだけで、非難の対象となり、「死の回避」という絶対的な医療者の価値観およびアイデンティティは失われ、医療はその目的を見失いつつあります。
そして医療というものに全幅の信頼を寄せていた国民は、私たち医療者以上に戸惑っているというのが現状ではないでしょうか。
けれども、「治せない」「救えない」、だからすることがない、とあきらめてなにもしない、というのではあまりに無責任です。
病気は治せなくても、命は救えなくても、患者さんが生きている限り続く「人生」は教えるのではないか、
それに対して、医療者だからこそできることを最大限やってみてはどうか、こう考えて、私は、いままで医療とはまったく逆のベクトルである「健康の追求のサポート」という座標軸を加えてみてはどうかと考えます。
それが 「サプリメント」を使った健康づくりを提唱する「健康支援科ビタミン外来」なのです。
健康の裏側の専門家である医者達だからこそ、健康というものにさまざまな思いや考えが出てくるのではないかと思うのです。
積極的キュア(治療)はできなくても、積極的ケアを追求するという考え方は、世界のさまざまな医療に存在しなかったというわけでは決してありません。
じつは漢方をはじめとする東洋医学は、この考え方を非常に重要視していて、病気を未然に防ぐ「末病」(病気にならないために、いまなにをしたらよいのか)という考え方が治療の中心になっています。
東洋医学のなかでは、末病のアドバイスができる医者を聖医といい、その称号はさまざまな医者のなかで最高位に位置しています。
話が脱線してしまいました。
私が漢方を勉強していたとき、ふと、漢方とは結局ミネラルとハーブなのではないかと思ったことがあります。
その後サプリメントについて勉強したときに逆のことを考えました。
つまりビタミン、ミネラルなどの栄養素だけでなく、ハーブなども含めたサプリメントは西洋で生まれましたが、じつは東洋医学のような体系だった正しい使い方をつくり上げれば、西洋の漢方になりうる可能性を秘めているのではないかと考えたのです。
それを徐々に体系立てて、実践しているのが「ビタミン外来」なのです。
サプリメントには、食べたものをエネルギーに換える「エネルギー代謝」、古い細胞を生まれ変わらせる「新陳代謝」など、あらゆる生理機能にかかわる「代謝」に関与する力があります。
その種類を簡単に列記してみると、現代食で不足している栄養素のビタミン、ミネラル、プロテイン、大豆の油であり細胞膜や神経伝達物質の原料であるレシチン、
局所ホルモンのプロスタグランジンの材料となる魚の油であるEPA・DHA、第六の栄養素といわれるファイバー(食物繊維)という狭義のサプリメント。
また、薬理作用を有し、数千種も存在するといわれるハーブなどの広義のサプリメントがあります。
このサプリメントの登場により、栄養学は現在までの栄養素学と三大栄養素の栄養バランス学に加え、カロリーと副栄養素のバランスを考慮した栄養代謝学にさらに力点を置かなくてはならなくなり、副栄養素どうしのバランスをも考慮しなければならなくなりました。
より食の変化に即した栄養学の進化が促されています。
さらに、研究が進み、解明されつつある日本人特有の遺伝性や代謝システムへの配慮も重要な課題です。
医者のいう「バランスのよい食事」の指す意味は、刻々と進化しているのです。
栄養代謝学とともに重要な運動生理学では、新陳代謝、エネルギー代謝それぞれに合った運動を追及しなくてはなりません。
最近よく耳にするダンベル体操などのレジスタンス運動と、ウォーキングなどの有酸素運動、その両者をバランスよく行うことが、「適度な運動」ということになるのです。
健康に必要な「バランスのよい食事」と「適度な運動」の意味がご理解いただけたでしょうか。
この栄養学や運動生理学の進化の上に乗っているのが「健康学」で、そのそれぞれをつなぎ、融合させるのが私たち医者の役割ではないでしょうか。
これからの医者には、栄養学、運動生理学、健康学が必要ではないかと考えています。
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