健康の基本は正しい食生活、体を動かす習慣にある
「成人病」から「生活習慣病」へ
つい数年前まで、動脈硬化、心臓病、ガン、脳卒中、糖尿病、肝臓病など、竺成前後に多く発症し、仝死因に占める割合の高い慢性病のことを、「成人病」と呼んできました。
これは昭和40年代から、当時の厚生省が40〜60歳の働き盛りに多い病気を「成人病」ととらえ、35歳以上を対象に成人病検査を行う、会社や地域単位での定期検診を促進するなど、その予防対策に努めてきたものです。
なかでも三大成人病と呼ばれる脳卒中、ガン、心臓病による死亡者数の割合は仝死因の6割にも達し、血圧測定・心電図(高血圧、心臓病)、�]線撮影(ガン検診)、血液検査(コレステロール値、中性脂肪値、血糖値、尿酸値)などが重視されてきました。
しかし、年々「成人病」の若年化が進み、とくに血糖値の高い糖尿病では、肥満ぎみの小学生に「若年性糖尿病」があらわれるようになり、単なる成人(加齢)特有の病気ではなく、偏った生活習慣が原因で起こる病気であることが明らかになりました。
そこで、バランスの悪い食生活、慢性的な運動不足、ストレスの多い社会環境など、日常の生活習慣を改善することによって、病気の発症を予防したり、その進行に待ったをかけられると考えるようになり、厚生労働省は平成15年(2003)年9月から正式に「生活習慣病」という呼称を用いるようになったのです。
1977(昭和52)年、その当時のアメリカでは心臓病の死亡率が第1位、第2位はガンでした。
そして、心臓病の治療費だけでも同国の経済が破綻しかねないほど増大(同年の医療費は実に180億ドル=約25兆円にも上った)し、この危機的な事態を打開するために、さまざまな医療改革が進められ、ちょうどこの年に「国民栄養問題アメリカ上院特別委員会」が設置されました。
そこでは7年の歳月と数千万ドルもの国費が投入され世界各国から3000人以上の医学者・栄養学者の協力を求めて、「食事(栄養)と健康(慢性疾患)の関係」について世界的規模での調査・研究が行われました。
その5000ページにも及ぶ膨大な報告書は、ジョージ・S・マクガバン委員長の名前をとって「マクガバン・レポート」と呼ばれています。
マクガバン委員長は、
「どれほど巨額の医療費をつぎ込もうとも、それが固民のためになればいい。
しかし、実際の事態は全く逆で、このままの状態で推移すれば、アメリカという国家そのものが病気のために破産してしまうだろう」
とコメントしていますが、同レポートの中で、
「ガン、心臓病、脳卒中など慢性病は、肉食中心の誤った食生活が引き起こした食源病であり、これは薬では治らない。
われわれはこの事実を率直に認めて、ただちに現在の食事の内容を改善する必要がある」
と報告するとともに、ただちにその改善に取り組むよう強く勧告しています。
7項目にわたる具体的な改善目標の中身
マクガバン・レポートが打ち出した、7項目の具体的な改善目標は次のようなものです。
- (1)食べすぎをしない
- (2)野菜、果物、仝粒(末精製)穀物による炭水化物(糖質)の摂取量を増やす
- (3)砂糖の摂取量を減らす
- (4)脂肪の摂取量を減らす
- (5)特に動物性脂肪を減らし、脂肪の少ない赤身肉、鶏肉、魚肉に置き換える
- (6)コレステロールの摂取量を減らす
- (7)食塩の摂取量を減らす
マクガバン・レポートは、高カロリー・高脂肪の食品である「肉・乳製品・鶏卵」などの動物性食品の摂取を減らし、できるだけ末精製の穀類・野菜・果物を多くとるよう勧告しているのです。
また、同レポートを補足する形で発表された「食物・栄養とガンに関する特別委員会」の中間報告では、
「タンパク質(肉類)の摂取量が増えると、乳ガン・子宮内膜ガン・前立腺ガン・結腸(直腸)ガン藤ガン・胃ガンの発症率が高まる恐れがある」
として、
「従来の(欧米型)食事内容では脂肪とタンパク質摂取量は正の相関を示している(脂肪の多い欧米型の食事では、どうしてもタンパク質の摂取量が増大する)」
と指摘しています。
お手本とすべきは、昔の日本人の食事
そして、最も理想的な食事は元禄時代以前の日本人の食事であるとも書かれています。
つまり、それは精白されていないコメやアワ、ヒエ、ムギなど、おもに末精製の穀類、マメやキビ(雑穀)などを主食とし、季節(旬)の野菜や魚介類、海藻などをおかずにした時代の食事のことです。
アメリカ国内のマクガバン・レポートに対する反応は素早く、1979年には厚生省が「ヘルシー・ピープル」という生活習慣の改善による健康の実現を重点とする健康政策を発表すると、さらに1983年にはアメリカ科学アカデミーが「栄養とガン」というレポートを発表しています。
また、国立ガン研究所(NCI)は従来から行われている抗ガン剤・放射線・手術の三大療法によらない、全く新しい栄養療法の研究に着手し、
1990年には「デザイナーフーズ計画」という植物性食品(おもに野菜や果物)によるガン予防研究プロジェクトをスタートさせました。
NCIが推進したデザイナーフーズ計画
この計画では、長年実施されてきた疫学調査のデータをもとに、ガン予防に効果的な食品および食品成分、約40種類を研究して、重要度(上位ほどガン予防効果が高いと考えられる)に応じて積み上げられた、三相からなるピラミッド型の餌を作りました。
ちなみに、上位にはニンニク、キャベツ、ダイズ、カンゾウ(甘草=漢方では生薬に用いられる)、ショウガ、ニンジン、セロリ、バースニップ(欧米ではポピュラーなセリ科の野菜)などの野菜がランクされています。
一般的には緑黄色野菜のほうが淡色野菜よりも抗ガン効果があると思われがちですが、淡色野菜にもガンを予防する強力なパワーがあることが示されています。
寿司、豆腐の日本食ブームも
このようなマクガバン・レポートの提言は、慢性病の予防と健康維持に関心をもつアメリカの人々に大きな衝撃をもって受け止められました。
脂身(脂肪分)の多い牛・豚・羊肉の消費量が徐々に減ってきて、その代わりに脂身の少ない鶏肉やからだによい油(EPA・DHA)を含む魚肉の消費量が増えてきました。
ミネラルウォーターのペットボトルを持ち歩く人が増え、清涼飲料水もカロリーの少ない甘味料を使ったダイエットタイプのものが主流になりました。
ヘルシーなコメと魚肉の組み合わせである日本食の「寿司」が人気を集めたり、
大豆加工品の豆腐がいいと評判になると「豆腐」アイスクリームが登場したり、
インテリの間では日本式の食養生である「玄米菜食」を実践するマクロバイオティックが流行しました。
ベビーブーマー世代をむしばむ慢性疾患
アメリカで「食事(栄養)と健康(慢性疾患)の関係」に対する分析・研究に、政府だけでなく国民全体でこれだけ真剣に取り組むようになった背景には、大きな2つの理由がありました。
ひとつ目の理由は、第二次世界大戦後に生まれたベビーブーマー(日本でいう1947〜51年生まれ、団塊の世代に相当する)が直面する高齢化の問題です。
とくにアメリカでは戦後の大量生産・大量消費全盛の時代に、脂肪や砂糖たっぷりの「豊かな食生活」を満喫したベビーブーマーたちが、マクガバン・レポートが指摘した心臓病、ガン、糖尿病など慢性疾患への雁患率が高まり、健康の不安がいよいよ現実のものとなったことが挙げられます。
若いころはサーフィンや草野球に興じた元若者たちは、何とかして健康を取り戻そうと、運動不足の解消にジョギングを始めたり、ダイエットに効くビタミン剤などのサプリメント(栄養補助食品)を求めるようになったのです。
高額医療費を抑えるサプリメントに期待
もうひとつの理由は、原則として公的機関が行う国民皆保険の日本とは違い、多くは民間の健康(医療)保険がカバーするアメリカ独特の「健康保険制度」にあります。
もちろん、アメリカにも高齢者用のメディケア、低所得者用のメディケードと呼ばれる公的な健康保険制度はありますが、ほとんどの人は民間の保険会社が運営する健康保険に加入しています。
しかし、高額な保険料を支払わなければならず、そのためにアメリカ国民の2〜3割は健康保険に加入していないともいわれています。
アメリカではいったん病気になると高額な医療費がかかることから、少しでも医療費への出費を抑えるために、日ごろから病気にかからないための具体的な努力が求められています。
そのことから、人々は予防医学や代替医療、栄養学に裏づけられたサプリメントへの関心を高めているのです。
医薬品と食品の中間的な存在と位置づけ
1994年、アメリカで「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)」が成立し、医薬品でも食品でもない、栄養補助という新しいカテゴリー(分野)が確立されました。
つまり、サプリメント(栄養補助食品)を明確に医薬品と食品の中間的な存在と位置づけて、健康に寄与するという科学的な論拠が明らかであれば、
FDA(食品医薬品局)にそのことを通知するだけで、サプリメント製品のラベルにその効果・効能を記載してもよいことになったのです。
当時の米大統領はベビーブーマー世代のビル・クリントンでしたが、
「食事がライフスタイルや寿命に与える影響に国民の関心が高まっている。
政府がサプリメントへの対応をアメリカ国民の健康増進のために改めることは、まさに時流にかなうものである」
と述べ、この法案に署名しました。
この法律の施行により、アメリカ国民は、「なぜ自分はサプリメント製品を利用するのか、現在の自分に不足している、あるいは積極的にとりたい栄養素(成分)は何か」を孝えながら、製品のラベルに記載された「からだにいい科学的根拠は何か」を慎重にチェックして、
「最も自分のからだに合う、質の高い製品を購入する」という自己決定・自己責任を求められるようになりました。
サプリメントは正しい生活習慣の応援団
サプリメントとは英語で「補足・増補・追加」を意味する言葉ですが、毎日の食事で不足しがちなビタミンやミネラルをはじめ、からだが必要とする特定の栄養成分を補うための食品であり、正式にはダイエタリー・サプリメント(栄養補助食品)と呼ばれています。
サプリメントは健康効果が期待されているとはいえ、あくまでも栄養補助「食品」なのです。
もちろん医薬品ではありません。
どこまでも健康の基本は正しい食生活、からだを動かす習慣(適度な運動)が車の両輪の働きをしているのであって、サプリメントはその強力な応援団なのです。
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