代換医療が日本を大きく変え始めている
WHOが規定した健康の定義
1946(昭和21)年、WHO世界保健機関)は健康の定義を、
「フィジカル(身体的)・メンタル(精神的)・ソシアル(社会的)に充分満足すべき状態をいい、単に疾病または障害のないことではない」
と規定しました。
それから50年余りの歳月が流れ、ホリスティック(全体論的、全人的)な視点で健康をとらえ直そうという世界的な気運が高まる中で、1998(平成10)年、WHO執行理事会は新たに「スピリチュアル(霊性的)」な次元での健康を加えることを提言しました。
その改正案の内容は、
「健康とは身体的・精神的・霊性的・社会的に充分満足すべきダイナミカリー(力動的)な状態をいい、単に疾病または障害のないことではない」
に拡大すべきであるというもので、提案国の米国やイギリスなど22ヶ国が賛成、反対ゼロ、棄権は8ヶ国という圧倒的多数で可決されました。
医学は近代科学、医療は人間学をめざす しかし、とても残念なことに、翌年のWHO総会に出されたこの改正案は、見送りとなってしまったのです。
しかも、あろうことか日本は執行理事会においては棄権を、総会においては見送り票を投じました。
霊性的にすぐれた日本文化をもつ国として、実に情けない選択をしたものです。
このことは、日本ではいまだに「スピリチュアル(霊性的)」な視点での医療行政が充分行われておらず、また霊性的という言葉に対するアレルギーが強いことの証左でもあると思います。
近年、西洋医学の得意分野とさまざまな代替医療の長所を生かした医療、そして人間をホリスティック(全人的)で、より多角的にとらえる「統合医療」へのアプローチが注目されています。
平成15(2003)年にオープンした統合医療ビレッジの山本竜隆院長は、著書『統合医療のすすめ』の中で、医学と医療の違いについて次のように書いています。
「自然科学的な手法に基づいた西洋の近代医学は、過去百年ほどの間、精神と身体を二分化して機械論的なアプローチを得意としてきました。
しかし、それ以前の歴史においては、さまざまな地域で伝統的な民間療法が用いられ、各々の価値体系(文化)や社会通念に左右されながら変容を遂げてきたのです。
ここに、近代科学に基づく「医学」と、生活文化に依拠する「医療」の違いがあります」
つまり、医学は生物学的な「ヒト(種)」を対象とする近代科学、医療は社会的な存在の「ひと(個人)」をケアする人間学ととらえることができそうです。
ヨーロッパでは認知されている代替医療
最近のWHO調査によれば、世界総人口の約80パーセントの人々が、近代的な西洋医学以外の代替療法を何らかの方法で受け入れているそうです。
近代西洋医学発祥の地であるヨーロッパでも、ドイツ、フランス、イギリスでは医学教育の中に代替医療教育を導入しており、医師国家試験にも代替療法に関する出題があります。
ドイツではパイルプラクティカー(自然療法士)と呼ばれる国家資格があり、アロマセラピー(芳香療法)などの自然療法で治療行為を行うセラピストが活躍しています。
ホメオパシー(同種療法)が盛んなイギリスでは、英国王室が200年以上にわたってホメオパシーを支援し、王立のホメオパシークリニックでは国民は無料で受診することができます。
また、1995(平成7)年の調査ではイギリスのGP(家庭医)加盟病院のうち、約40パーセントもの病院で何らかの代替療法を行っており、その治療には医療保険が適用されるようになっています。
代替医療の利用者が国民の半数を超えた
アメリカでも代替医療を利用する人の割合が年々増加しており、1990(平成2)年には34パーセントだったものが、1997(平成9)年には42パーセントに上昇し、おそらく現在ではアメリカ国民の半数以上が何らかの代替療法を受けていると思われます。
アメリカにある125の医科大学のうち、すでに90パーセント近くに西洋医学を補完する医療として代替医療分野の講座が設置され、西洋医学を学ぶ医師の間にも代替医療に対する関心と期待が急速に高まっています。
アメリカでは国立衛生研究所が推進役に
1992(平成4)年、米国国立衛生研究所(NIH)に代替医療研究室(OAM)が設立されて、東洋医学やホメオパシーなど代替療法についての研究・情報収集が行われるようになり、1997年には鍼治療の適用を一部認める内容の答申を提出しました。
さらに1999(平成‖)年には、それまでのOAMがアメリカ国立補完代替医療センター(NCCAM)として昇格し、2003(平成2年には年間273億ドルの予算を充当され、代替医療に関する研究・教育への補助および情報提供を精力的に行っています。
欧米崇拝型のライフスタイルは時代遅れ
日本における代替療法への取り組みとしては、昭和62(1987)年に医師と代替医療の提供者などにより結成された「日本ホリスティック医学協会(JHMS)」の旗揚げを皮切りに、平成9(1997)年には「日本代替医療学会(現在は日本補完代替医療学会=JCAM)」が、
また同じ年にCAM(近代的な西洋医学以外の相補・代替医療の意。カイロプラクティック、漢方、アーユルベーダ、心理療法、イメージ療法、気功、食事(栄養)療法、アロマセラピーなどの伝統・伝承医療を指す)と西洋医療を融合した統合医療の推進をめざす「日本代替・相補・伝統医療連合会議(−ACT)」が発足し、医療関係者を中心に広範な研究・啓蒙活動を展開しています。
平成15(2003)年6月には、JACTが国際的な学術対応機関として発展させた第1回日本統合医療学会(JIM)が開催されています。
日本における人工臓器、レーザー医療の権威であり、JACT・JIM両会の代表を務める渥美和彦氏(東京大学名誉教授)は基調講演の中で、食事(栄養)療法は代替療法の骨格ともいえるとして、
「米国では日本食を取り入れ、欧米型の食事を切り替えたことで生活習慣病がだんだん減ってきている。
ところが日本はこれと逆で、食事が欧米化し、心身が痛み、生活習慣病がどんどん進んでいる」
と述べ、食生活を含めた欧米崇拝型のライフスタイルが生活習慣病を招く最大の要因であり、かつて欧米化を理想に掲げた日本のライフスタイルは、すでに時代遅れのものになっていると指摘しています。
日本の医科大学で続々と代替医療を導入
これまでも、いくつかの医科大学では代替医療の講義や臨床実習、シンポジウム、ワークショップが行われていましたが、その中で聖マリアンナ医科大学、東京慈恵会医科大学、関西医科大学では、代替医療の授業が必須科目としてカリキュラムの中に入れられるようになりました。
平成(2003)年には、日本の医科大学としては最初の代替医療外来である東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニックの開設、CAMと西洋医療の融合を実践する統合医療ビレッジのオープンがありました。
どちらのクリニックとも代替療法のひとつとして、サプリメント(栄養補助食品)に関するアドバイスが受けられます。
ガン患者の9割近くが健康食品を試みる
平成8(1996)年の調査では、健康食品販売額が約6000億円、
市販の漢方薬販売額、鍼灸治療費総額が各々1500億円、
その他の医療費を加えると、総計で約1兆1000億円が代替医療分野への支払いに費やされています。
厚生労働省研究班によるアンケート調査(ガン患者3094人が回答)では、民間療法を試みている患者は全体では44.5パーセント、ガン専門病院では42.8パーセント、ホスピスなど末期患者の施設に限ると61.8パーセントまで増加しました。
民間療法の内容では、健康食品のシェアが89.6パーセント(1位はアガリクス、2位はプロポリス)と他の治療手段を圧倒しています。
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