治らない病気とうまくつきあうために
ヘルス・プロモーションについて、なぜそれが必要で、どのように誕生してきたかということについて説明します。
病気を予防する方法は、人類共通の大まかなものから徐々にパーソナルなものに進化しています。
過去と現在の流れを見ながら、その進化の方向を予測してみましょう。
第1段階 − 人類共通の予防(リスク・リダクション、現在はこの段階から次へ移りつつあります)
第2段階 − 民族レベルの違いに配慮した予防(リスク・リダクションと民族ごとに適応したヘルス・プロモーション)
第3段階 − 個人レベルの違いに配慮した予防(遺伝子検索によって、出生時から予防はスタートするようになるでしょう)
第4段階 − 妊娠時点、母体からのヘルス・プロモーション
予防法は遺伝子の解明により第1段階から第4段階へ少しずつ進歩していくと考えられています。
現在の状況は、第1段階終盤から第2段階に達しつつあります。
第1段階での医学は、疾病を忌み嫌うべきもの、排除すべきものと考え、攻撃的な治療(サブレッションセラピー)を数多く生み出してきました。
しかし慢性疾患という治らない疾患には効果がなく、ただ副作用のみがむなしく身体を傷つけてきました。
急増する生活習慣病という慢性疾患に対し、いま新たな哲学が必要となってきているのです。
新しい医学の考え方の一つに、慢性疾患は「あなた」の一部である、というものがあります。
私たちの遺伝子にはあらかじめ病気の発症が組み込まれていることや、慢性疾患がさまざまな外部環境に順応した結果であるという考え方です。
つまり慢性疾患は、エイリアンでもあなた以外のものでもなく、あなたの一部であり、仲間であるという考え方に移行してきているわけです。
それにより対応の仕方も従来のものとは180度異なったものとなるのです。
急増しつづける慢性疾患に対応する新たな哲学と新たな対応策を、だれもが理解できる形で提案していくことが重要だという理由はここにあるのです。
ケアは自分で行う自己管理、つまりこれこそ、慢性疾患に対しだれもが実践していかなければならない「セルフ・メディケーション」の基礎となる考え方です。
そして、セルフ・メディケーションの柱となる、ケアを積極的に行うヘルス・プロモーションという新しい予防法は、治療のための土台、前提となるものです。
これなくして治療は成立しません。
治癒することのない慢性疾患とうまくつきあっていくためには、このキュアとケアの両方がどうしても必要なのです。
しかし、現在の医療が困難な状況にあるのは、ケアをせずにキュアをするというところにあります。
これではブレーキを踏みながら、アクセルを踏んでいるようなものです。
治療が進むわけがありません。
病気の引き金となる悪しき生活習慣を続けながら、治療を試みるなど恩の骨頂でしょう。
新しい生活習慣をプラスしていかなければ、たとえ運よく治癒したとしても再発することは必至です。
きちんと自己管理を行いながら治療すれば、このような悲劇は起こりません。
治らないと定誉れた慢性疾患の治療には、疾病コントロールを円滑にするための、「ブレーキをゆるめる」ことに相当するケアが不可欠なのです。
以上のように今後の疾病治療は、医療者が治すものから患者さんが治療に参加して治すものへと変化することでしょう。
そのためにも、患者さん自身が予防に取り組むために必要な知識と実践法を提案していかなければならないのです。
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