病気と不調の原因を探りましよう
心身の健康状態(コンディション)は、その良し悪Lにかかわらず、私たち一人ひとりの内部環境である遠退伝」「代謝システム」「生活習慣」と、外部環境である「食環境」 「生活環境」「ストレス」などが対時して出てきた結果であると考えられます。
病気や、全身の倦怠感、肥満、不眠、風邪にかかりやすい、便秘ぎみ、肌が荒れやすい、頭が痛いなどの、医者に行くほどではないけれど不快な「退行怪症状」も、この内部環境と外部環境がぶつかり合って、順応しきれなかったからこそ出現してきた健康状態であると考えられるのです。
症状の改善や、病気の予防を考えるとき、内部環境と外部環境のそれぞれを理解し、それぞれのどことどこがぶつかり合って悪い状態になったのかを解き明かすことが重要です。
そのうえで、健康になるためには、どこをどのように変えていけばよいかを明らかにしていくことによって、「予防」や「末病」を実現する新しい健康法が生まれてくるのです。
この「内部環境」「外部環境」「コンディション」において、私たち日本人がどのような状況にあるのか、さまざまな側面から具体的に見ていきましょう。
物貿文明に翻弄される現在の日本人
終戦をターニングポイントにして、日本社会は欧米文化を受け入れ、さまざまな面で驚くべき変貌を遂げてきました。
有数の経済国家に成長し、だれもが教育を受けられ、飢餓とも無縁となり、衣食住という生活基盤においては世界のどの国と比較してもひけをとらないほど物が満ちあふれています。
しかしその反面、定着した欧米スタイルの生活習慣に、精神面でも身体面でも徐々に順応しきれなくなってきています。
具体的にその問題点を総括し列挙してみますと、生活習慣病の加速度的な急増、精神的荒廃にともなう犯罪や自殺率の増加、個人レベルでの自己責任の喪失などが挙げられます。
とくに生活習慣病は、ここ数十年のあいだに急増し、
糖尿病約27倍、
アレルギー性疾患10〜100倍以上、
心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患10倍以上、
欧米型悪性腫瘍(乳ガン、大腸ガンなど)の増加、
という具合に加速度的に蔓延し、その増加率に歯止めがかけられていないのが実状です。
このような生活習慣病を招いてしまった戦後半世紀の生活環境をふりかえり、日本人がなにに順応できないために、こうした現状に追い込まれているのか原因を究明し、対策を立て、だれもが実践できる健康法を打ち立てていかなければなりません。
そのためには、疾病に対しても、いままでの医学が探究している「治療という観点に立った原因究明・治療」だけでなく、「予防という観点に立った原因究明・末病」という新しい考え方を付加していかなければなりません。
健康になるために変えられるのは「食環境」
基本的に生活習慣病は原因不明の病といわれていますが、近年、人間の遺伝子メカニズムの解明が急速に進み、さまざまな病気には遺伝因子が30%関与していることがわかってきました。
遺伝因子以外では周辺環境が40%、栄養が30%かかわっているといわれています(病気により割合は異なります)。
これが、生活習慣病の 「遺伝」、環境、栄養」の三大原因説です。
たとえば、ガンの遺伝子をもっている人でも、周辺環境に恵まれ、栄養も十分で健康的な生活を維持できればガンを発症する可能性は低くなります。
反対にガンの遺伝子をもっていなくても周辺環境が悪く、栄養も不十分であればガンになることはあるのです。
この三つの因子のなかで、病気にならないために自分で改善できるものはなんでしょうか。
遺伝子を変えますか?
これは、現代の先進医療をもってしてもまだ不可能です。
それでは周辺環境はどうでしょう?
しかしこれもせまい国土で同じ文明を共有しているわけですから、なかなか自分で変えることは難しいと思います。
となると、自分で変えることができるのは栄養のとり方だけということになります。
つまり、この三大原因説に基づいて、私たちが自分で病気を防ぐ手立ては、栄養のとり方を工夫し、それを体内でうまく使うことしかない、ということになるのです。
このことにいち早く気づいたアメリカは、1975〜1977年にかけて、総力をあげて「食」についての調査を行いました。
この調査を担当をしたのがアメリカ上院議会栄養問題特別委員会の委員長であるマクガバン上院議員をはじめ、ドール議員、ケネディ議員、パースィ議員などのそうそうたるメンバーでした。
調査の結論は、
「ガン・心臓病・脳卒中などの六大生活習慣病は、現代の食生活が原因で起こる『食源病』である」
というものでした。
食生活を改め生活習慣病を予防する以外に、アメリカの生き残る道はないとまで断言したのです。
これが有名な「マクガバン・レポート」 です。
「マクガバン・レポート」のなかで、私たち日本人が注目すべきは日系人の追跡調査で、世代が進むにつれて、日系人の食は欧米化し、同時に欧米型生活習慣病の頻度も高くなっていたということです。
たとえば、脳血管障害の場合、日本型は脳出血で、欧米型は脳梗塞というパターンがあるのですが、日本食中心の1世では脳出血の頻度が高く、3世になると欧米人とほぼ同じような脳梗塞が多くなっています。
欧米食は日本食に比べて動脈硬化を進行させる食事内容であり、心筋梗塞になる可能性も高いからなのです。
現在の日本の現状を数字で見ると、欧米と同じような病気の進行が見られます。
これは私たち日本人の食事が、日本にいながらにして欧米化していることにはかなりません。
このレポート発表後にアメリカで流行したのが、日本食とビタミンをはじめとするサプリメントでした。
「生活習慣病=食源病」ならば、健康のために粗食に徹し、足りない栄養素はサプリメントで補う。
これにより、生活習慣病は未然に防げるということがわかったのです。
日本でも、ようやくサプリメントの重要性が認識されはじめましたが、まだまだ十分とはいえません。
とくに生活習慣病をもつ人たちに、サプリメントと日本食の重要性についてもっと知っていただきたいと思います。
乳糖不耐症 − 日本人がもつ体内環境の「宿命I」
欧米食の氾濫が健康を害する危険性についておわかりいただけたと思いますが、これを知っただけでは十分とはいえません。
今度は私たち日本人が先天的にもっている体内環境の「宿命」に目を向けてみましょう。
私たち日本人を含む東洋人は、成人すると、乳に含まれる乳糖(ラクトース)をあまりうまく消化することができなくなります。
とくにその度合いが強い体質を「乳糖不耐症」、別名「ラクターゼ欠乏症」といいます。
乳糖分解酵素であるラクターゼは、離乳期までの哨乳類にとって重要な、乳に含まれる唯一の炭水化物である乳糖を消化するための酵素ですが、離乳期以降には急激にその活性が低下し、その後成人してからも活性は低い状態が続きます。
これを「成人型ラクターゼ欠乏症」といいますが、じつはこの成人型ラクターゼ欠乏症は哺乳類しては正常な姿で、全人類の半数近くがこのパターンなのです。
しかし、欧米人の多くは成人してからもラクターゼ活性を高く維持し、乳製品を十分に消化できます。
この体質は、1万年以上前の突然変異により生じ、優性遺伝で広まったと考えられています。
つまり、日本人と欧米人では乳製品の代謝能力が違うのです。
乳は、乳児の栄養所要量を満たす、高脂肪、高エネルギー食品です。
そして肥満はあらゆる生活習慣病の要因です。
乳製品を欧米人と同じ量だけ食べ続ければ、日本人は確実に肥満し、生活習慣病を招くことになってしまうのです。
それでは、欧米人が消化でき、日本人がうまく消化できない乳製品に対し、どのように対処すればいいのでしょうか?
基本的には、アレルギーがなければ自分のとれる範囲でとるべきで毎日絶対とってはいけないものではありません。
一般的日本人のラクターゼ活性は5〜30%くらいに低下していますから、成人が一日に飲める牛乳の最大量は400ccと覚えておきましょう。
牛乳200ccと、ちょっとした乳製品、このくらいが一日の摂取量としては理想的です。
倹約遺伝子 − 日本人がもつ体内環境の「宿命�U」
次に「倹約遺伝子」について説明しましょう。
倹約遺伝子とは、飢餓に備えてエネルギーをセーブし、脂肪を蓄えるための遺伝子で、優性遺伝で受け継がれます。
この遺伝子をもつ人は、一目に基礎代謝によって消費するエネルギー量が普通の人に比べ200キロカロリー少ないことがわかっています。
つまり飢餓の時代には、消費するエネルギーをセーブできるので有利に働きますが、現代のような飽食の時代には、摂取カロリーが多いにもかかわらず、消費するエネルギーが少ないため自然と肥満となってしまうのです。
この遺伝子を保有する人口が多いほど太りやすい民族といえますが、日本の倹約遺伝子保有率は39%といわれ、世界第3位であることがわかりました(ちなみに倹約遺伝子保有率世界第1位は保有率54%、日本人と同じモンゴロイドのピマインディアン)。
つまり、日本人は世界で3番めに太りやすい民族なのです。
アメリカは、黒人が約25%、白人が約11%。
日本人に比べ、はるかに太りづらいといえます。
もちろん、この遺伝子だけが肥満にかかわっているわけではありませんが、日本人には、太りやすく、やせづらい遺伝性があることは宿命として受け入れなければなりません。
働きの弱い膵臓 − 日本人がもつ体内環境の「宿命�V」
人が脳を働かせるためには、脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖(血糖)を、常に一定量、血液に乗せて運び続けなければなりません。
また、体内のあらゆる組織も常にブドウ糖を必要としています。
インスリンはこの生理的機能を維持し続けるために血糖値をコントロールする役割を果たしています。
もともと日本人は「米」という「難消化性デンプン質(レジスタント・スターチ)」を数千年のあいだ主食としてきました。
米は、消化しづらいデンプン質(アミロース)を含んでいるため、吸収が遅く、血糖の上昇もゆるやかで、濃からのインスリン(血糖を下げる唯一のホルモン)の分泌も緩徐で済みます。
こうした米を中心とする長い食歴により、私たち日本人の膵臓は急激かつ大量にインスリンを分泌し続ける能力をもちあわせていません。
長い食歴によりつくりあげられた日本人の代謝システムにおける「宿命」といえます。
これに対し、ここ数十年の食環境の激変は、軟食で消化吸収の早い欧米食や加工食品を氾濫させています。
インスリンをゆるやかにしか分泌できない私たち日本人が消化吸収の早い食品を常食するとどうなるでしょう?
食事後急激に上昇する血糖値を下げるために膵臓にはかなりの負担がかかっていることは想像に難くありません。
そこに日本人の約40%近くが保有している、前述の「倹約遺伝子」が、飽食という環境によって肥満という身体現象を発現させます。
現代日本人は、どんどん脂肪を蓄え肥満となり、その脂肪細胞からはインスリンの血糖降下作用を妨げるホルモンが過剰分泌されます。
膵臓はさらにインスリンを急激かつ大量に分泌せざるを得ない状況に追い込まれるのです。
このように、ただでさえむりをしている膵臓に肥満が加わるとその働きが悪くなり、インスリンをすでに大量に出しているにもかかわらず、さらに大量のインスリンを分泌せざるを得なくなります。
これが持続されると膵臓は破綻し、インスリンを分泌できなくなります。
これが糖尿病発症の仕組みです。
糖尿病が、ここ数十年で30倍近く激増している最大の理由は、私たち日本人の変えることができない遺伝や代謝システムという内部環境の宿命が、加工食品や欧米食という戦後導入された新しい食環境という外部環境に順応できないからです。
糖尿病は、遺伝性のある疾患です。
その遺伝性のある疾患が、一世代しか交代しない、たった30〜40年でこれほど増えることは通常では起こり得ません。
日本人のように、稀有な、数千年にもおよぶ食歴をもち、それによりつくり出された代謝システムをもつ民族にとって食環境の変化は、命取りになりかねないのです。
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