メグスリノキ − 肝機能改善、眼病にも効く、一石二鳥効果

千里眼の木、長者の木とも呼ばれている
わが国の特産種であるメグスリノキは、本州宮城・山形県以南、四国、九州の標高700メートル前後の山地に自生するカエデ科カエデ属の広葉樹で、イチョウのように雌雄異株、樹高が10〜25メートルにも達する落葉高木です。
初夏にはひとつの花序に3つの花をつけます。
メグスリノキの学名であるアーサー・ニッコインシス・マキシムは、栃木県日光で採取されたことに由来しています。
中国にはない日本の固有種であり、漢字(中国)名はありません。
葉を煎じた汁で洗眼すると「目の病気によい」という古来よりの民間療法から、ずばりメグスリノキ(目薬の木)と呼ばれるようになりました。
自生する地域によって、チョウジャノキ(長者の木)、センリガンノキ(千里眼の木)、ミツバナ(三つ花)などの異名があります。
はやり目、ものもらいに効く大衆民間薬
江戸時代の代表的な薬草書『大和本草』ではメグスリノキにふれていません。
それは東北の一部から関東北部だけで多く使われ、全国的にまだ知られていなかったためと考えられます。
当初は、メグスリノキの葉、小枝、樹皮を煎じた汁で目を洗い、ただれ目(眼瞼縁炎)、はやり目(流行性角膜炎)、ものもらい(麦粒腫)などの眼病の治療に使われていました。
それとは別に、少し後になって煎じた液を濃縮、黒い飴のように固め、それを絹の小袋に入れ、ハマグリの貝殻に封じたものが売られるようになりました。
使用時には.杯に入れた小袋に清水を加えてもみ、にじみ出た液を指などにつけ、これで目を洗うという膏薬型洗眼薬です。
江戸時代に用いられたメグスリノキも、これらと同じ膏薬型の洗眼薬であったと思われます。
ちなみに、顔を上に向けて薬液を滴下する点眼式の目薬が登場するのは、1867(慶應3)年の「精錆水」が最初で、明治初期からは西洋医学の浸透によって、現在のような点眼式目薬が主流になっていったのです。
葉や樹皮に含まれるロドデンドロール
1970年代に入ると、星薬科大学・伊沢一男名誉教授が薬用植物採集のフィールドワーク中に学生たちにメグスリノキの存在を教え、それがきっかけで同大学生薬学教室が本格的な成分研究に着手するようになったのでした。
伊沢名誉教授の著書『薬用植物大百科』には、
(1)葉に含まれるタンニンには、細菌の増殖を抑える抗菌作用、傷を修復させる収赦作用があり、それがさまざまな目の疾患に有効に働くのではないか。
(2)葉や樹皮に含まれるロドデンドロールは、肝機能を改善し、解毒作用を高める効果があるので、黄痘症状をとり、肝臓疾患に有効な成分であるなど、メグスリノキに期待されるさまざまな効果について記述されています。
東洋医学理論「肝気は目に通ず」を実践
星薬科大学の篠田正人教授らは、「肝障害を起こさせたモルモットにメグスリノキのアルコール抽出液を投与したところ改善が見られた」とする学術発表を行っています。
この発想は、漢方の古典『素間』にある
「肝気は目に通ず。
肝和すればすなわち、日は能く五色を分かつなり(肝は目を通して外界と交流し、ものを視る目の機能に反映される。
肝の働きが衰えると目が疲れやすくなり、逆に目を酷使すると肝の機能を損なうこともある)」
に通じるものであり、目と肝臓の働きに密接な関係ありとする東洋医学の理論を実証することになりました。
最近では肝機能改善のためにメグスリノキの乾燥葉をお茶として飲む人が多く、結果的に目にもよいという一石二鳥の効果が期待されています。
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